デザイナーさんの商品だからいいものか、と言うと
伝統的工芸品
先日Twitterにも、「最近やたらと【すずがみ デザイナー】という検索が多い」
なんてことを書いてみたりしたのですが
よそでも、デザイナーさんと作った高岡の商品、というものを見て
うーん、と思ったのです。
デザイナーさんが作った商品だからいい。
嘘じゃないかもしれないけれど、ホントでもないよねぇ、と思うのですよね。
デザイナーさんというのは、デザインをする人のことです。
一般の方にはデザイナーと言うとなんだか同じカテゴリの人たちかもしれませんが
ファッション、テキスタイル、プロダクト、グラフィック、
空間、インテリア、文字、メカニック、キャラクター、等々々々
いろんな専門があります。
複数ジャンルを触る人もありますし、これだけじゃないと、という方もあります。
いろいろです。
もちろん個性もあります。
得手不得手もあります。
例えばグラフィックのデザイナーさんがパネルに好い絵を作ってくださったとして…
それを金属レリーフで・螺鈿で・和紙型染めで・彫刻で・蒔絵で…と考えた時に
良い結果になるとは限りません。
いかな書道の先生だって、油絵具で同じ美しい字が書けるか?
と例えればいいでしょうか。
素材や技術が違うと、デザインと同じ状態になるとは限りません。
(同じ状態にしようとすると、価格に跳ね返ったりもします)
デザイナーさんのデザインを「夢」だとすると
それを「現実」に実行するのがメーカーさんなのですよね。
現実の能力や条件、制約とかけ離れた夢は机上の空論と言われるのかもしれませんし
夢を実現するための手順を考えることができなければ、
夢は夢で終わってしまうことでしょう。
デザイナーさんさえ招けば何かいいものができあがる…訳ではなくて
このギャップを何とかしなくては、まま哀しい結果に終わることもあるのです。
確かにデザイナーさんと一緒に開発した商品が、人気を博している…というのはあります。
この辺りで言うと、能作さんで大ヒットしたKAGO。デザイナーは小野里奈さん。
FUTAGAMIさんの真鍮アイテムにずっと携わっておられるのは、大治将典さん。
最近だと、モメンタムファクトリーOriiさんの女性向けアイテムToneを手がけるのが
若手デザイナーの戸田祐希利さん。
などなど、素敵な商品が盛りだくさんです。
だけど、です。
昨年発表以来爆発的な人気商品になったシマタニ昇龍工房さんのすずがみ。
近年高岡の漆器アイテムで根強い人気を誇る天野漆器さんの螺鈿グラスシリーズ。
全国に根強いファンが居る、五箇山和紙さんの紙塑人形。
などなど、地元の職人さんや問屋さんの力で広がっていく商品もたくさんあります。
デザイナーさんを使っている会社だけが、頑張っている訳じゃありません。
そこだけが、すごい訳じゃありません。
手堅くて、いい仕事をしておられる会社、職人さん、ちゃんと売れている商品、
そういう人や会社が、県内の工芸業界にはたくさんあります。
「都会のデザイナーさん」だけが良い仕事をできる訳ではなくて
素材の本質、技術の本質、それらを踏まえた「モノとしての無理のなさ」
それを知っているメーカーさんというのは、
非常に強くて、確かな価値を持っておられると思うのです。
地元の力こそを売りにしているものづくり企業がたくさんあることを
できれば「ものづくりの街」の皆さんには
忘れないでいただきたいなぁ、と思う次第です。
(どうやったらそれをお伝えできるのか、という我が身に返る話なんですけどね…)
本記事はデザイナーさんとデザイナーさんを使ってらっしゃる会社を
否定するものではないです、念のため。
近年はどちらかというと、先ほど述べたような「素材や技術の特性」を
ちゃんと把握して、そのものなりのモノをデザインされる方のアイテムが目立ちます。
メーカーさんとデザイナーさんの意志疎通がちゃんとできていて
いい関係を築いておられるのだろうなぁと感じるところが多いです。