今回の表紙。

伝統的工芸品

何が何だか一見わからないもの、をテーマにお届けしている
「タカオカ、ものづくり散歩。」の表紙でありますが
今号の表紙はこちら。
PAP_0848.jpg
裏側に表紙画像が何かは書いてはいるのですが、
今回ちょっときれいにご紹介したかったので…


この画像が何かと言いますと、「蝋型」という伝統的な型づくりの技法で作った
鋳物の原型の部分接写画像。
下の図の、青矢印の方向に撮った、龍の口&髭なのです。(拡大してご覧ください)
PAP_0849.jpg
どうですか、そういわれて見てみると、
あぁそういえばそんな風にも…って見ていただけないでしょうか
蝋型というのは、木蝋(ハゼノキの実から採ります)や蜜蝋に松脂などを練ったものに、
熱を加えて柔らかくすることで非常に繊細な型を作る技法です。
焼型鋳造や、最近主流の生型鋳造でも、基本的には鋳型から原型を取り出して、
空洞にしたところに金属を流すものなのですが
蝋の場合は熱して液状になった金属を流しこむと揮発してなくなってしまうので
鋳型から原型を取り出す必要がありません。
 ※通常の方法で鋳物をする場合には、この「鋳型から原型が取り出せるか」というところに
  原型師さん、鋳物屋さん、なかなか神経を使っておられます。
  砂でできた鋳型から原型を取り出すのは、崩していいなら簡単ですが
  原型の形の空洞を鋳型に残すこと、が目的なので
  取り出しやすい型を作る必要があるのです。

ですので、繊細な造形を持つ鋳物ができあがります。
この型(と同じような型)を使って鋳物をすると、仕上がりはこちら。
PAP_0850.jpg
こちらの原型は、資料館の展示品として、似たような型を作っていただき
鋳込み後と原型の双方を展示させていただいています。
通常は型は溶けてしまいますので、使い回しはできません。
口の部分がわかりづらいので、龍の足とか体にしようかなぁとも思ったのですが
あまりの丁寧な造形ゆえ、鱗が生々しすぎまして
お嫌いな方もいらっしゃると思い、お蔵入りにいたしました。。。
本型は常時当館・産業資料館にて展示中。
生き物のように見える龍の鱗をお近くでご覧になりたい方は、
ぜひご見学にいらしてくださいませ。