工芸品のデザイン、ちょっと細かいこと。
高岡銅器
こちらは、現在D.frontに展示している香炉、「因幡の白兎」。
繊細で、ちょっぴりユーモラスでもあるこちらの香炉、
担当のオススメ品でもあるのですが…
こちらを例に、工芸品のデザインについて少し。
まずは、こちら本当に香炉でして、サメの背の部分が蓋になっており
中にお香を入れられます。
背の穴のところから出てくるようになっています。
サメの顔が、なかなかユーモラス♪
背中の兎をにらんでいるようでもあります。
それだけではなくて…こちらの兎ちゃん。
頭巾をかぶって、打ち出の小槌を持ち、背中に袋をしょっています。
頭巾に小槌に袋というと…まるで大黒様ではないですか!?
この、サメの背を渡るシチュエーションの後(ただし原文はワニ。サメのことだという説が多い)
サメに毛をむしられ、八十神に騙されて痛がっている白兎を助けたのは大国主命とされている
→大国主命は、インドから中国経由で入ってきた大黒天と結びついた
この流れがあって、大黒様とのつながりが暗にここに表わされていると言いますか…
単に兎ちゃんはオシャレや可愛さアピールのためだけにこんな恰好をしているのではなく、
こういうちょっとした部分が、見立てとか、絵解きとか、日本の伝統文化に通じるのです。
そのほかにも例えば、来年の干支は巳年ですが、蛇が生々しいということで、
弁天様に見立てたり、ということもありますが、
こちらも、弁財天が日本の宇賀神という蛇の化身の神様と習合されて
日本では弁天様=蛇の化身、となったことによります。
さらに、弁天様=琵琶を弾いている、ということで、琵琶をもって弁天様に見立てることもあります。
「風が吹けば桶屋が儲かる」的な流れかもしれませんが、
見立ての流れを解いていくと、なかなか面白いものなのです。
そうそう、もしかしたらこの香炉の兎ちゃんは、
大黒様(大国主命)に助けられた後、
反省してサメと仲直りした後の姿かも
だから、助けてくれた大黒様のスタイルをまねっこしている…のかも?
デザインひとつから、こんな風に空想してご覧いただくのもよいかもしれません。
伝統工芸にはこんな風に、ただ「作る技術」以外の日本の伝統が
たっぷり含まれていたりもします。