×乾く ○固まる

高岡漆器

今日は、地場産業センター徒歩3分に工房を構えておられる
伝統工芸士の武蔵川義則さんの工房におじゃまして来ました。
武蔵川先生は、「螺鈿絵」とでも言うような、絵画的な螺鈿装飾を
特徴とされています。
螺鈿用の貝を型抜きしたり(たくさん使うものは、金属で型を作るそうです)
タガネで押し切ったり、幾何学的な線は定規を当てて針で切ったり、
完全に専用の図柄になるものは下図を描いて針で切ったり、
そうした貝パーツがたくさん、それも分かりやすくストックしてあって
とてもびっくりでした。
そのほか、工房の中には、乾燥中の雛人形の飾り段、お盆、ペンダントトップ
それからアコースティックギター等々がたくさん。
しかしこの、乾燥というのがちょっとクセモノ。


漆の液体は漆の木の樹液なので、当然水分は含んでいます。
なので、当然水分は蒸発=乾燥していくことは間違いないのですが、
なんと、梅雨時の方が乾きがいいんだという不思議な話を小耳にはさみ
この疑問を解決すべくお伺いしてみました。
すると…
それは漆が「乾燥」するだけではなくて、「固化」するということのようです。
漆樹液の成分は、主成分ウルシオール、酵素のラッカーゼ等々。
このラッカーゼが空気中の酸素と触れることにより(つまり酸化するということですね)
液体だった樹液が固くなっていくそうなのです。
つまり、「乾燥」と思っているのとはまったく違う理由で漆が胎にのっていくわけで、
例えば、素焼の陶器に液状の釉薬をかけると水分蒸発&素焼生地に水分が
しみ込むことによって胎の上に釉の成分だけが残るとか
水彩絵の具の水分が紙にしみこむ&蒸発することで触っても大丈夫な状態になるとか
そんな「乾燥」とは違うんです。
だから漆って、しみ込まない素材のガラスとかプラスチックにも塗れるんですね。
敢えて言うと、胎の上に漆の膜を張り固めるって感じでしょうか。
で、その酵素を使った酸化の過程に、ある程度の湿気が必要なんだそうで
それが春さきや真夏よりも、梅雨時の乾燥固化が早いという理由だということでした。
なるほどなるほど、そういう理由だったんですね
今日はちょっぴり賢くなった気分のブログ担当です
今度また、先生の「螺鈿」もご紹介しますね!
※武蔵川義則さんの螺鈿サンプルは、当財団HP「四季のギフト」トップページの
 flash画像でご覧になれます。開くとすぐの画像になりますので、ご注意ください。
※武蔵川工房HPはこちらからどうぞ →(有)武蔵川工房